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「知的熟年ライフの作り方」小山慶太〜楽問のススメ Lyustyleの読書

知的迷走日記保管庫

この記事を読まれている方の中には、まだ定年など随分先のことでイメージすらもわかないという方が多いのではないでしょうか。

 かつて私もそうでしたが、幸運なことに48歳くらいの頃、定年へ向けての助走をし始めなければならないという実感が突如として湧きました。

 以来、定年後のイメージを持って準備を始め,定年を2年後に控えた今では、十分な助走ができていると思っています。

 しかし、多くの方はそんな実感も、そして準備もしないまま、定年を迎えてしまい、その後の「黄金の20年」をどう生きて良いかわからず「定年後鬱」になったり、家族が苦しんだりなどの社会問題が起きています。

 そういう状況を踏まえ、小山氏は、「知的熟年」という言葉を作りだし、「知的熟年ライフの作り方」を書きました。

 小山氏は,定年後は学問をせよと言います。「楽問」という言葉を使われています。

 お勉強ではなく、学問。

 すなわち、自らテーマを決めて研究し、それを世に問えと言うのです。

 学問は最高の道楽である,ということを,小山氏はダーウィンやロスチャイルドなどの事例をもとに紹介してくれます。

 時間がたっぷりある定年後の生活に,学問は持ってこいであるということが説かれます。

 この学問の遂行に必要なこととして、小山さんは次の三つのことをあげています。

 ◯自分のテーマを決める

 ◯サークル,コミュニティをつくり切磋琢磨する

 ◯何らかの形で世に問う。

 この本が書かれた2000年代の初めはすでにインターネットが普及していました。しかし、まだコミュニティに関しては今ほどではありませんでした。まだ,ツイッターもFacebookも、mixiも,ブログさえもありませんでした。

 しかし、今は、上の三つのことを実に簡単に実現できてしまいます。コミュニティーなど,Facebook上ですぐにつくれてしまうのです。

 以前は定年退職せねば難しかったことが、いまは現職中から始められる条件が揃っています。

 すぐに始めない理由がありません。

 小山氏は著書の中で、現職中、仕事をしながら余暇に自ら決めたテーマについて研究を重ね、後にそれを書物に著すなどの「発表」を行なった一般の人の例をいくつが挙げられています。

 どれも堂々とした研究です。

 そしてそのどれもが現職中から準備されていたのです。

 私の心に6年前に読んだ時からずっと残っていた一つのエピソードがあります。  

 発見から140年もの間,その生態も分類学的位置も謎に包まれたままだったテングアゲハという美しい蝶の謎を解明した,アマチュア研究家の五十嵐さんという方の話です。

 五十嵐さんは,50年の間,建設会社や半導体会社でサラリーマンを続け,責任の重い役職にも月,本業において一流の仕事をされた方ですが,余暇を見つけては世界中の蝶の生態を調べて回っていました。

 そしてとうとう1986年のある日,テングアゲハの生態を解明して世界の昆虫学者を驚かせました。

 サラリーマン時代,仕事や酒の付き合いはきちんとこなしながら,帰宅がどんなに遅くなっても必ず研究の時間を割いて,書斎で一人,蝶との語らいを続けてきた結果の大発見だったわけです。

 ◯ライフワークとして,本業で一流の仕事をしながら続けられる,蝶というよいテーマを見つけ,

 ◯学会という「サークル」に参加し,

 ◯研究成果を図鑑や論文などという形で発表してこられたのでした。

 似た話は,実は「自助論」などの中にもよくでてきます。 

 「知的生活」の中にも,伊藤整の小説「氾濫」のことが出てきます。

 主人公の真田は小さな町工場の技師ですが,平凡な生活の中で,家族との夕食を終えると,三畳の部屋に引きこもって,手に入る限りのレポートや研究雑誌から接着剤に関係のある情報を集めカードに書き写し続けます。

 こうして20年。集めたカードの情報が結晶し世界に評価される論文をものにし,名誉と経済的待遇を与えらえるという話です。(実際の小説では話はそこから始まるのですが)

 よいテーマを得ると,たんたんとそれに打ち込むことができ,いつの間にか大きな業績に結び付く。

 そして,そういうことが,知的熟年生活へと結びつくのです。

 私の大好きな「積み重ね」のストーリーです。

 私は以前から定年後へ向けての助走が必要だとブログで書いて来ました。

 6年前(2013年)にこの本に出会った時にも同じことを考えました。

 50を超えたら知的熟年生活の準備に入る。いや、それ以前から知的熟年生活に入るための助走を始めておかねばなりません。

 すなわち、自分のテーマを決めるということです。

 そして、早めに「勉強」の期間を終わらせ学問の域に踏み込んでおくのです。

 500時間あればその道の専門家として成果を発表できるようになる、と言う人の紹介がありました。

 週末に5時間ずつ、10時間の研究の時間を取るとして,1年あれば10×50週,つまり500時間の研究ができる。それなりの研究の成果が出せるというのです。つまり500時間使えばいい、と言う計算です。

 いかがでしょうか?

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