今回は,トマス・レナードの「いつも「いいこと」が起きる人の習慣」です。
これは,一見いわゆる自己啓発書的な本のようなタイトルではありますが,内容はそうではありません。
著者は1992年に全米で始めてコーチ大学を設立し,コーチを育成する仕事をしています。
つまりコーチとしての著者が長年のパーソナルコーチを行ってきた経験から,その人生の土台をいかにつくったらいいのかということについて書いた本です。
コーチは,コーチングを行う前に,セルフ・デベロップメントテストなどを行い,様々な視点からクライアントの資質を見て,その強み・弱みをつかみ,コーチングの方針を決めていくことを行います。
その中には,ある視点における数値があまりにも低くて,コーチングどころではないという場合があります。
例えば,フルマラソンにチャレンジして完走したいという目標を達成するためにコーチを雇ったはいいが,テストを行ってみたら,食事に関する部分が著しく低く,毎日時間がなくてジャンクフードばかり食べる生活をしているのだということが分かったとします。
この場合、そのへんの土台をつくりなおさなければ,とうてい体力や持久力,筋力を維持し,高めながら,42.195キロのフルマラソンを完走するためのコーチなどできません。
ですから,まず,生活の土台をしっかりつくりなおそうということから始めます。
この本は,そのような,視点から,セルフ・コーチングを行い,願いを現実化する土台を作りましょうという本です。
著者は,はじめにの中でこう言っています。
「チャンス,金,幸せな人間関係,自分にとって有用で価値あるもの,満足感。そういった”いいことづくめ”のことばかりを自分に引き寄せるために,私は考えをまとめた。そしでできあがったのが,本書で紹介する21の「魅力の法則」である。」
いかにも巷にあふれている自己啓発本のうたい文句であるように見えますが,内容は骨太です。
この「魅力の法則」の実効性の根拠は,長年のパーソナル・コーチングの経験から生み出された自己改善の法則というにとどまらず,人類2500年の偉大な知恵に通づるところがここかしこにあります。
「現在の生活に問題がある場合,普通はまず,未来をもっと良くしようと思う。
それも悪くない。
だが,どうせなら,未来よりも現在にそのエネルギーを使ったらどうか。
おそらく,さらによい未来が向こうのほうからやってくれだろう。
未来をつかむためにあくせくするのとは大違いだ。
なぜ,何も努力しなくても,未来のほうからあなたに近づいてきてくれるのか。
それは自分に与えられた現在を,めいっぱい生かしているからである。」
これは,「今に集中する」ということです。
仏陀は,いかなるときも未来や過去という妄想を目的にはしません。
この瞬間に今できることは妄想ではありませんが,「未来のために・・・」という思いはたんなる妄想であるから,今集中できることをすることを重要視します。
「もし、相手に対して少しでも嫌な気持ちを感じていたら、無条件に建設的であることも、率直な意見を言うことも、不可能と言っている。
そんな時はまず、その気持ちがどこから生じたものかを突き止めよう。
その上で、そういう気持ちを感じないでその人々と付き合うようにすべきかどうかを決めれば良い。」
このような記述にも仏陀を感じます。
この人が嫌だ,という判断は,悩みを生む。だから,そのような判断という反応をする前にその気持ちがどこから来ているのかを理解しなさいというわけです。
「正しい理解」。
まさに仏陀の教えです。
そのうえで,その悩みが「欲がはたらいているのだ」「怒りを感じているのだ」「妄想なのだ」の三つのうち,どれであるかを突き止めなさいといいます。
仏陀の教えは深くさらに実効性があります。
このような例がいくつもでてくるわけです。
著者によると,「わざわざつらい努力をしなくても,自然に本物の積極思考になる。と同時に,精神的にも金銭的(物質的)にも満たされながら,ストレスが通なく,満足度の高い生活をおくることができるようになる」と言います。
まさに仏陀的です。つらさとかストレスなどをいかに感じずに,満足度の高い生活を送ることができるようになるかを説いているのですから。
著者が仏陀の本を読んだのにちがいないとかそういうことではありません。そのくらい,深く考えられ,実効性のある方法が述べられているということです。
タイトルだけ見たら,もしかしたらこの本を手に取ることはなかったかもしれませんが、私の学んでいるコーチングの師が「数あるコーチングの本の中でも人間作りの土台について述べている本は2冊だけだ」といって紹介されたことにより出会うことができました。
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