記事内に広告を含む場合があります。

スーパー書斎の遊戯術 山根一眞〜Lyustyleの読書〜

知的迷走日記保管庫

 Lyustyleの書評。

今回は,「スーパー書斎の遊戯術」です。

 ご存知,我らが師匠、山根一眞氏のスーパー書斎シリーズです。

とうとう遊戯術へ

 「週刊文春」に1990年2月から1992年12月まで連載されたものに加筆修正したもので,文芸春秋より1994年に刊行されたものの文庫版です。

 とうとう、仕事術から遊技術にまで達観された書。

 私が,いわゆる「ライフハック本」に初めて出合ったと感じている書が,山根一眞氏の「スーパー書斎の仕事術」で,1987年暮れのことです。

以前書評を書きました。

 さまざまなガジェットをいかに仕事に生かすか,不便に感じるものをいかにクリエイティブに解決していくか。

 この本を手にしたときの興奮は今でも忘れられません。

 今に続く私の大切な情報蓄積整理検索のシステムである「山根式袋ファイルシステム」は,この「スーパー書斎の仕事術」に書かれていました。本に書かれていました。

 もう30年も前の話です。

 「遊戯術」も,当時のワクワクする思いをもう一度味わってみたくて買いました。

常に時代の最先端

 内容は確かに今となっては古い古い。

 「光磁気ディスク。8センチディスク1枚に,実に書類1万枚以上が記録保存できる。また,光ディスク書籍,CD-ROMによって,レファレンス書籍の書棚一つが鞄の中に納まる時代が来た。

いよいよ,「マッキントッシュ+ファイルメーカーPRO」×「究極の書類整理術・山根式袋ファイル」×「光磁気ディスク」の「三位一体」なる「ハイパー書斎」の仕事術に手を付けたところなのである。1992年11月」

 こんなのを読むとたまらない。

 古い!うれしい!

「古うれしい!」という言葉を今つくりました

 今見ると,ディスクなんていうものは世の中からきれいさっぱり消えてしまった(ような感じだ)し、CD-ROM版の百科事典や書籍なんて考えられないし,さらにいうとCD-ROMなんて言う言葉すら知らない人が増えてきているわけだし。

 古うれしくてたまりません。

 しかし,1992年というと,私がシドニーに派遣された年。

 メインメモリー645kb(キロバイト!! メガですらない)のPC-9801vx21と,80M(メガ!!!)のハードディスクを大事に大事に国際引っ越しで日本からオーストラリアに持ってきた年。

 みんなが2HD(1メガ)のフロッピーディスクかHD(720キロバイト)のフロッピーディスクかを使って情報を蓄積し持ち歩き共有していた時代。

 Windows3.1の発売される2年も前。

 その時代,マッキントッシュなんて,とんでもない値段でした。

 さらに光ディスクにいたっては,その3年後に帰国のどさくさに紛れてこっそりMOドライブを8万円出して買いましたし,250M(メガ!!)の光磁気ディスクなんて1枚2000円もしたのです。

 2000円とはいっても,その4年ほど前に決死の思いで買った、80メガで11万もしたハードディスクから比べると問題にならないくらい安いわけで,当時としてはコスパ最強のストレージだったわけです。

容量は80メガのハードディスクの3倍の上,値段は55分の1。つまり160倍も安いのですから。

 そんな時代に書かれたのが,先の文章です。

 今では「古うれしい」記述が,当時は最先端でした。

尽きない課題発見能力

 山根一眞氏は,いつも最先端を走っていました。

 しかし,山根氏の中に脈々と流れている,老いを知らない先取でクリエイティブな気質は,この本が刊行されてから20年以上たつのに,そのまま私の心をわしづかみにします。

 「ミッドナイト・ジャーナル」でテレビの仕事をされていた時代,高速で原稿を読み上げるときにとちることがあった。それを何とかしようといろいろためした結果,A4横置き縦書きで書くと効果があった、という話があります。

 こんなの,ふつうやるか?と思うのです。

原稿を読み上げるのにとちるのなら,とちらないように滑舌をよくしようとか,何度も読んで練習しようというのが,まあ,一般的な解決法ではないでしょうか。

 それをA4横置き縦書きで書くと,とちらないということを発見する。

 いったいどれほどの課題解決挑戦意欲なんでしょうか。

 この本のどこを読んでもそういうことばかりです。

 不便さを感じる気づきがすごい。すごいというか,不便のままあきらめない,放っておかない,必ず何とかしていくぞ,という気迫。

 ずーっとこのままで走り続けているわれらが山根一眞氏です。

無限の、その先を読む

 「鞄には10キログラムくらいの荷物は入れて持ち歩けるから,10キログラムのCD電子書籍を入れると実に1667冊分の「現代用語の基礎知識」が持ち歩けるのだ。

紙版の「現代用語の基礎知識」は約2100グラムで,これは通常の単行本約450グラムの4.7冊分の重量がある。

結論。

私たちは鞄の中に7835冊もの本が詰まった書庫をひょいひょいと持ち歩く時代を迎えたのである。1991年2月」

 古うれしい。91年初頭はCD電子書籍だったのです。だから重さがある。だから,1667冊分しか持ち歩けないのです。

 現代の電子書籍には重さがない。だから,10キログラムの鞄を必要としないし,さらに言えば,無限の書籍を持ち歩けるのです。

 こんな時代を山根一眞氏は予想していたでしょうか。

 でも,次の一文を読むと,そんなこと吹っ飛びます。

 山根氏の尽きない発想力をもってすれば,こう続くのです。

「・・・・ということはだ,この鞄をうっかりなくすのは,約8000冊の書庫を一気に失うことを意味する」

 無限に情報を詰めて持ち歩ける現代であるからこそ,失うものは大きいのです。

このような、柔軟な課題発見能力は、これらを遊びと感じるリラックスした頭と心から生まれるのでしょう。

山根一眞氏は、常にリラックスして、遊んでいたのです。

温故知新と言います。

 どうぞ,手に取って読んでみてください。

スーパー書斎の遊技術

この記事もどうぞ

Lyustyleの読書まとめ

私のメルマガで配信している書評を記事にしてまとめています

コメント

タイトルとURLをコピーしました