サピエンス全史の驚きにはどこか既視感があった
作者の圧倒的な想像力,洞察力に脱帽しました。
人間は小麦から家畜化されたなどという発想をいったいどこから得られたんだ!
もちろん,著者の洞察力のすばらしさなのですが,私はこの本を読んでいる間中,ずっとこの本をどこかで読んだ気がしていました。
本棚をいつものように触っているときに「あっ!これだったんだ!」と思いました。
それは・・
「空から墜ちてきた歴史」小松左京 1981年
れっきとしたSF本です。
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訳者(とされている話者)が深夜帰宅したときに見たUFOから落ちてきた七角柱の金属棒。
そのキャップがはずれたとたん,なかの物体から直接脳にイメージが伝達されてきた。それは地球人類を7000年にわたって観測し続けた宇宙人の手記であった。
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その手記を訳者が翻訳してつくった本だという設定になっています。
単なる空想科学小説だと思って読み始めたら,そうではありません。
小松左京の人類史に関する歴史観の展示場だったのです。
宇宙人が実際に見た,経験したそのものを語った手記という表し方ではあるが,まさに,小松左京による人類7000年史の書き直しだったのです。
それまでの私が思ってもみなかったような洞察に満ちた歴史の断片があちこちにちりばめてありました。
氷河期の後の大海進による急速な海面上昇で,海抜150m以上の高地に逃れる余裕のあったものだけが生き延びました。(150mの高地が現在の0mである!!)
その時,当然,人類のうちでもかなり高度な文化に達していたグループの相当数が滅びてしまいます。
記録者である宇宙人はそれを見たのですが,手を下してはいけない決まりなので助けることはできなかったのです。
そのグループは氷河期の末期までにかなり進んだ段階の栽培農業を行って,石造建築や構造船をつくるところまで発展していたのですが,それらの文明が海面下100メートル以下に沈んでしまって残ったのは山岳部の原始的なグループだけでした。
山岳部にいた文化の遅れたグループの人類が,その海のほとりから今に続く文明を築き上げていくわけです。
なんでそのような想像ができるのか,この本を読んだ当時,驚愕した覚えがあります。
しかし,冷静に考えれば,氷河期末期,今の海岸線にあたるところは相当海抜が高いところにあったわけで,当時の人類はそんな高いところで文明をはぐくむわけがありません。
海に近い平野で生活を営んでいたのです。
それはすべて沈んでしまいました。
冷静な洞察のたまものです。
しかし,コロンブスの卵と同じで,言われるまでは気づかないのである。
このような「手記」が満載の本。
私は,この本から歴史というものの洞察の面白さに目を開かされたのでした。
サピエンス全史を読んでいる間中,ずっと頭にあった一種のデジャヴ感覚の源泉はこの本にあったんです。
サピエンス全史。それは,2回目の経験だったのでした。
そして生まれた ラスコー洞窟お化け屋敷説!
このブログの人気記事の一つにこの記事があります。
ラスコーの壁画で有名な洞窟ですね。
あのすごい絵は,なんとはって入らないといけないような,奥の奥の奥にかかれているんです。
当然真っ暗闇です。
そこにこんな絵や
あんな絵が
書かれているんです。
「見せるつもり無いでしょう・・・」
当然,後世の人はそう考えます。
何百メートルも奥の光の届かない場所にわざわざ描いたとてつもなくすごい絵
見せたいならこんなところには書かないはずです。
しかし僕はそれでも考えます。
い~や!彼らはそれでもやはり見せたかったんだ!
ホモサピエンスは,絵を見せたがるからです。
ではなぜ・・・・
その理由は,2万年前のラスコーがお化け屋敷かシアターだったから!
というのが僕のとんでもない妄想です。
そして,その発想は,
はい。
この「空から落ちてきた歴史」の大海進の説明の件が私にインストールされていたからにほかなりません。
この本は,それほど僕に大きな影響を与えている本なのでした。
更新履歴
2017年5月7日 公開
2021年5月25日 一章追記
コメント
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