メルマガ「知的迷走通信」で連載されている「Lyustyleの読書」に掲載された書評から転載しています。
今回は、「つながる読書術」(日垣隆)です。メルマガ掲載時から大幅に加筆修正を行っています。
2011年の12月に買い求めました。発行されてからわずか一月後のことです。
内容は、
- 「仕込みとしての読書術」
- 「知的体力を鍛える読書術」
- 「書いて深める読書術」
- 「話してつながる読書術」
- 「電子書籍時代の読書術」
の5章からなっています。
目次
まずは,大量に読め
本の読み方としては、
興味に任せて手当たり次第に読む方法もあれば、
本の中で紹介してあったからとか、発生した疑問を解決したりするなど何かの機会を捉えて読む方法もあります。
後者の読み方としての「つなげる」読書は、自分の中に生まれた知や興味の体系をつくってくれます。
ひとまとまりのものとして広げてくれるので、より自分の中に蓄積され、自分の知のネットワークに組み込まれた感じがします。
僕は、このつなげる読書をすることが好きです。
しかし、あるジレンマがついてまわります。
それは,つなげていくと、その「知の系」はいいのですが、他の「知の系」が広がらない,というものです。
ほかの知にもアクセスしたくなって、別のものを読む。
そんなことを繰り返しているとなかなか自分の頭の中にある知がばらばらで整理できないので、いつしか、自分の「カテゴリー」というものを作るようになりました。
どんなカテゴリーがあるかは下に詳しく書いています。
今 読みたい本と、将来のために買う本~私のライブラリーをつくる
そのカテゴリーの本を網羅的に読むのです。
民俗学とか、詩とか、江戸とかなどのカテゴリーのの中から順繰りに本を買っていく、というような読み方もしています。
そうはいっても、なかなかそれらの知のカテゴリは、統合されているように思えません。
やはり、それぞれがばらばらにあるようです。
また、カテゴリを決めてしまうことは、効率的ではあっても自分で知の可能性をせばめているようでもあります。
これを自分の中で解決するには,「まず大量に本を読め」ということになります。たくさん読んで,仕込みなさいということですね。
第1章「仕込みとしての読書」
第1章「仕込みとしての読書」は、知的仕込みのための大量読書のさまざまな方法について述べられています。
つなげるためには、どんどん読んでいきます。これは単なる多読ではなく、関連本へとつなげる大量読書です。
この方は、ライターで生計を立てているプロの読書家です。
だから自分の書いていることを特殊だと言っていて、特殊だからこそ極端だからこそ学べることがあるでしょ、と言います。
たしかに大量読書であげられている方法は極端です。
こんなことプロだからできるのであって、私にはできない、ということは確かに多いのですが、仕込みをしておかなければつなげていくことはできないというのは確かなことです。
やはり「私なりの大量読書」は必要です。
基礎トレーニングとして、「大量の本の千本ノック」のための方法が述べられています。
疑問を解決するためにつなげるもの。
紹介されている本へとつなげるもの。
次々と関連のある本へと読みつなげていきます。
仕込みとしての大量読書は、単なる多読と分けてあり、そこで読む本は、教養の核、人生の糧になるものです。
これは,第2章で述べられる「帰ってこれる場所」を作る読み方でもあります。
第2章「知的体力を鍛える読書術」
ここでは、知性の筋力アップについて述べられています。
知性の筋力をアップさせるにはおもしろい本にふれることが肝要。
著者はその場合のおもしろさを7つのカテゴリーから説明していますが、その中では、「生きる上での定番本を持つ」という考え方が心に残りました。
それは、つなげ、ひろげていっても、帰ってくる場所づくりのことです。
これがあるから安心して遠くまで読書の旅を続けることができるという考えに、なるほど!と思いました。
子どもの成長と同じです。赤ちゃんは、戻ってこれる母親な懐があるから、思い切って少しずつ世界を広げていけるのです。
まず帰ってこれる本を持つことで、安心してどんどんつなげていけます。
先日紹介したカール・ヒルティの帰ってこれる場所は「聖書」でした。
この章では,名著の読書による、知的体力アップのエクササイズがいくつか述べられています。
たとえば、「感性を柔らかに耕す」読み方としては、例えば「旅行するときにはその土地に関連する本を持参する」という方法が述べられている。
その土地でしかできない「体感思考」が促されるわけですね。
第3章「書いて深める読書術」
「書いて深める読書術」とは、読書で得た知識を自分のネタに変換する術です。
そのために、読書感想文を脱却し、独自の発想を付け加えることです。
独自の発想を付け加えるために必要な「深く考えること」についていくつか方法がしめされていますが、最も大切なのは「書くこと」。
書くことを前提に本を読めば、深く考え抜くことができるのです。
書くことを前提にして読み、一気呵成に書く。これで自分のネタとして変換されたことになります。
書くことで人につながり、自分の考えも深まる。
自分のネタにするための読みは、Lyustyleの読書7「齋藤孝の知の整理力」で書いたこととつながります。
「驚いたこと、すごいなとだったことがあったらすぐに場に提供すること。」
「伝われなければ情報に価値はない。とにかく,日常会話の中で使ってみること」
ここでは話すことについてでしたが、書いてみることでより考えが深まるのはいうまでもありません。
「孤独」はそのために必要な条件として挙げられています。なぜなら、自分のネタにするには深く考え抜かなければならないからです。
深く考え、独自の発想を付け加えるためには最終的には孤独である必要があります。
第4章「話してつながる読書術」
「話してつながる読書」とは,これは、人と人とがつながる読書であるといえます。
また、本来出会わなかった本とつながる読書であるといえます。
話すというアウトプットで、読んだことが整理されます。
また、相手の読書からの思考を聞くことは、私の思考や発想を刺激し、自分という殻を超えることができます。
日垣さんは、これを「知的コミュニケーションの種まき」という言い方をしています。
ここでは、さまざまな形での読書会が提唱されます。
話すための機会を自ら作り出すわけですね。
第5章は、「電子書籍時代の読書術」
本書が書かれたのは、まだKDPはが始まる1年前。電子書籍で本を読むということ事態がようやく始まり始めたころです。
まださまざまな電子書籍のプラットフォームがひしめいていました。
このころはまだ電子書籍と紙の本とが共存できるかという視点で話がされていました。
今では当然共存しているのですが、当時、自分の血肉になる本は紙の本がのぞましいと確信しているのは卓見。
まとめ
数年ぶりに再読して,自分の読書の仕方を振り返りました。
大量読書というのは面白い言い方だなと思います。単なる多読ではなく,「つなげるために仕込む」「それは,自分の人生のコアになるもの」そういうものをつくるのです。
20冊並行読書は大量の本を読んで,至高の一冊を探し当てるという読書法ですが,その読書法ともよく折り合います。
ここでの至高の一冊は,人生の中で何度も何度も読み返す本であり,それは自分の人生のコアになる本だからです。
また,教養の核となる本も同時に読み進める必要を再確認しました。
前回の書評「幸福論」でも述べましたが,著者の背景にある思考の核になる本を知っておけば,読書の質も高まるでしょう。またそこからの広がりも生まれやすくなるでしょう。
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