023 書評

「幸福論」カール・ヒルティ〜Lyustyleの読書〜背景に親しむ

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メルマガ「知的迷走通信」で毎週連載していた書評からこちらに掲載しています。

掲載した書評は、こちらでまとめています。

Lyustyleの読書まとめ

私のメルマガで配信している書評を記事にしてまとめています

今回ご紹介する本はヒルティの「幸福論

ルソーの「孤独な散歩者の夢想」で、哲学的な本は素養がない私にはまだ難しかったと名誉ある撤退をしたのもつかの間、今回も知の巨人です。

カール・ヒルティは、

19世紀スイスの弁護士であり、

スイス陸軍の法務官であり、

ベルン大学の法律学者であり、

代議士であり、

ハーグの国際仲裁裁判所の初代のスイス委員であり、

歴史家です。

lyustyle
また、法律学、政治、歴史、社会問題、宗教、倫理等の分野で多くの著作を残した著述家ですよ。

lala
すごい人・・・

 彼は最も精読し、感化された「聖書」以外には、ギリシャ、ローマの古典を愛読し、エピクテトスとマルクス・アウレリウスを愛読しました。

この「幸福論」は生涯の比較的後期に、師範学校の校誌の求めに応じて執筆したものです。(第2章「エピクテトス」は、「校長先生!」という呼びかけから始まっています。)

これらの寄稿が好評を得て、第2巻以降が世に出ました。

 私は「幸福論」の第1巻をを、30歳ころ読みました。

渡部昇一氏の本で紹介されていて、

「これライフハック(当時、まだそんな言葉はなかった)本だ。

と大喜びで買ってしまったのです。

なぜそんなことを思ったのかというと、仕事の始め方が書いてあったり、時間のつくりかたが書いてあったりするからです。

当時、私は日記にものすごいことを書いています。

 「1990年8月7日火曜 さて、近ごろ読書ざんまいである。

前には見向きもしなかった哲学書などの領域に入り込んでしまった。

 渡部昇一さんの著書のおかげである。

ヒルティの「幸福論」を手にとったら、実に面白い。

読んでみると、渡部さんはこの本に影響されている面が大きいことが分かる。

ストア派の「あきらめ」などはまさに。

 
 3年前に「知的生活」に接し、それを追い求めてきたが、少しずつ分かりかけてきた。

 
 先日まで外山滋比古を読んでいたが、そろそろ原典に進もうと思っている。

それでヒルティに行った次第だ。

 
 いや、それでもおもしろい。


 この前、書店でプラトン〔パイドロス〕を手にとって めくってみたとき、面白いと感じたのがうれしかった。

 
 近ごろ日記をかいていないが、こう、変化がおおきいとやはりかかなければならない。」

1990年の日記より

 どうも、当時の私はこの本を読んでよく理解したようです。そしておもしろかったようです。

ところが今回、読み直してみて、私の頭はどうも劣化してしまったのか、ストア派の「あきらめ」がどう渡部昇一氏に影響を与えたと思ったのかなど、さっぱりわかりません。

そもそもストア派の「あきらめ」というものが何なのか。ぼんやりわかるくらいです。

当時おもしろくてたまらないと書いていますが、今回は頭に「?」「?」「?」がつきまくりました。

この差は一体何なんでしょう。

ルソーの「孤独は散歩者の夢想」は、10個の散歩についてのエッセイが、ある切り口で複雑につながりあっていました。

表面的な部分部分はわかるのですが、全体を通した時にどんな地図が織り上げられているのか、それは全く見て取れませんでした。

しかし、今回の「幸福論」は、それぞれが独立したエッセイですから、さほど高い壁ではないはずです。

仕事論や時間の作り方など、書いてあることはわからないことはありません。

ところが、内容の論拠として、ストア派哲学がでてきたり、キリスト教が出てきたり、ゲーテがでてきたりダンテがでてきたりします。

「この点については、ヨハネによる福音書1の22、3の27を参照せよ」

といった注釈が、いたるところで述べられています。

それも、「*」「**」などの脚注で一気にまとめてあり、本文よりも脚注のほうが長い箇所もあり、読んでいて何が何かわからなくなるのです。

それが、30年前の私にいかにして理解できたのか。

どうやら、30年前の私は、この注釈や、背景のキリスト教、ストア派哲学の思想に関するバックグラウンドの部分を切り捨てて読んでいたらしいのです。

確かに、そのあたりを飛ばして読んでも、書いてある筋はわかります。だから面白いと感じたのでしょう。

いくつか見てみましょう。

「仕事の上手な仕方」 

「仕事の上手な仕方は、あらゆる技術の中でももっとも大切な技術である。

というのは、この技術を一度正しく会得すれば、その他の一切の知的活動がきわめて容易になるからである」

いかがでしょうか。
その通りですね。よくわかります。

「もしも勤労が避けられず、しかも給食はこれと反対のものであるならば、「あなたは額に汗してパンを食べねばならぬ」(創世記3の19)という言葉は、まったく残酷な呪いの言葉であり、地上は実際涙の谷であろう」

というような注釈部分は読み飛ばしても理解できるのです。

というよりも、まともに読んでいたら、これらはなんのために書かれているのかもうちんぷんかんぷんになってしまいます。

 「時間のつくり方」

「時間がない。

これは、ちゃんと正式にきまっていない義務や仕事をのがれようとするとき、ひとが最も普通に用いる便利な口実であるばかりでなく、また事実上、しごくもっともな、そしてもっともらしく見える言い分である。」

いかがでしょうか?よくわかりますよね。

ですから、そのあとの

 「また使徒パウロのように金を軽蔑する人でさえ、いつもわれわれに「時間を十分に利用する(*)」ことをすすめ、しばしば彼らの態度全体に何か督励者らしいところがあって、早くも少年時代からわれわれを悩ましたものである(**)」

ここは、もう読まなくてもいいのです。

読んでも意味が分かりませんし、(*)(**)の注釈がその後1ページほど続くので、もはや、これが時間の作り方について述べた文であるということすら忘れてしまうほどです。

「時間をつくる最もよい方法は、一週に6日~5日でもなく7日でもなく~、一定の昼の(夜でない)時間に、ただきまくぐれでなく、規則正しく働くことである」

よくわかります。

「気乗りは、仕事をはじめれば自然にわいてくるもので、よく最初にありがちな一種の倦怠でさえ、それが本当に体の原因から来ていない限り、仕事に対して単に受け身でなく、むしろ攻勢に出ればすぐに消えるものである」

よくわかります。

「人間の幸福の最大部分は、絶えず続けられる仕事と、これに基づく祝福とからなっているそして、この祝福は最後に、仕事をば喜びに変えるものである」

よくわかります。

「人生において本当に堪えがたいのは、悪天候の連続ではなく、かえって雲のない日の連続である」

この辺、「定年後」の生き方に近いものがありますね。

よっくわかります。

幸福についての考え方、仕事についての考え方。

それらの内容が「うんうん」とうなずくようにわかるのです。

そして、私は30代のころ、きっとそんな読み方をしていました。

そして思うのです。

それでよかった。

そういう読み方ができる本ですし、いわんとするところはよくわかる。

様々な読み方をしていいわけです。

しかし、ここに書かれた内容を

「人はその働きによって楽しむに越したことはない。これが彼の分だからである 伝道の書3の22」

とか、

「決心がついたら即座に、できそうなことの前髪をひっつかむことですね。

そうすれば、金輪際それを離そうとはしないから、いやでも前へ進んでいけようというものです。 

ゲーテ「ファウスト」

などという文章とともに膝を打ちながら読めたなら、この「幸福論」の読み方はどれほど豊かになったでしょうか。

今回読み返したとき、はじめは、私はそのような読み方をしたかったのです。

でも、残念ながら30年前とさほど変わらない読み方しかできなかったところに、この30年間の私の知的生活の貧弱さがさらけだされてしまったようです。

いったい30年間何してたんでしょう。

でも、それでもいいのです。


「本の読み方には順序がある。」

「孤独な散歩者の夢想」を紹介したメルマガで私はこう書きました。

 確かにこの「幸福論」を、聖書やエピクテトスの著作、ゲーテなどを渉猟し、ものにしたのちに読んだならば、どれほどよく理解できたかわかりません。

しかし、その順番なんてだれも教えてくれません。

 読んでみて、わかることです。

私は、今回、「幸福論」を読んだことが「聖書」を読み物として読んでみたいという読書の在り方へとつながりました。ゲーテも読んでみたいと思ったのです。

順序は前後しましたが、それでいいと思います。

そうして後からまた「幸福論」に戻ってくればいいのですから。

願わくば、30年前に戻って、30年後の私に、このことをそっと耳打ちしてやりたいものです。

「表面だけでわかってないで、ここからつなげていけよ。」

って。

そうしたら、きっと今頃、私はもっと豊かに「幸福論」を読み、古代の哲人の言葉や聖書などに思いをはせながら読めていたことでしょう。

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