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1987年のワープロ雑誌の中身をのぞく

黎明記

うちにこんな本があります。

1987年7月に出版された,ワープロ専用機のムック本です。

当時かなり機能も価格もこなれてきたワープロについていろいろと掘り下げた本で,今見ると,各所に新しいと思うことや,はじまりはここだったのかと思うことがたくさんあり,なかなか興味深いです。

ツイートでまとめてみました。

表紙めくってすぐにワープロ通信の広告 

1987年には,すでにモデムをつなげての通信がはじまっていたことに改めて驚いた。

僕がワープロによる通信を始めたのが1990年頃であったように思う。その3年も前の雑誌にすでに掲載されていたことに驚いた。

当時のワープロにはそれぞれアイドルが起用されていて,この表紙は三田佳子。

パソコン普及前夜の高級ワープロがでんと書斎にかまえていた時代

一見パソコンに見えるが,設置型のワープロ。このようなパソコン並みの大きなモニターがついたものは,50万円くらいしていた。

このクラスになるとかなり使いやすく,パソコン時代になってもなかなか手放せなかった人がおおかったようだ。文章を打つだけなら,パソコンをわざわざ立ち上げるよりもはるかに打ちやすかっただろう。

表現力競争が長く続いた

印字性能としては,1990年代になってからだが,3行同時に印刷できて時短という「三行革命」というコピーも流行った。

87年頃は,一太郎でさえも,ここまでの表現力はできなかった。倍角,半角,網掛け,罫線くらいだった。4分の1縮小文字さえ表現できなかった。

しかしパソコンはその大容量により,何百ページもある原稿を一括して扱えることができ,それはアドバンテージだった。

ワープロ用語 倍角,縮小,行間,かな漢字変換・・・きいたことない用語が登場

かな漢字変換とか,倍角とか,それ以前の社会にはなかったことばだあろうと思う。

ワープロを使っていない人にとっては,みんなどこの世界からきたの?というくらい異質な言葉に聞こえていたにちがいない;

しかし,そういう文化を排除するのではなく,自分もそちら側にいかねばならないんだろうなーという見通しはあったかもしれない。

単なる文書作成機ではなく,すでに知的生産のツールとして認識されていた

私自身,1986年にはすでにワープロを知的生産ツールとして見極め,知的生産をおこなっていたので,この流れはよく分かる。

ワープロ中毒8つの症状 シニカルだが,今に続くあるあるの登場

これは,後日,この見出しの下に追記してみたい。いろいろと面白い。

決して,仕事用だけではないのだ,と一般用途への浸透をはかる 

ワープロはパソコンと違って,はるかに美しい文字や装飾をつかうことができた。

商品のラベルなどに使うことからワープロに入ってくる人も多かった。

どのワープロを買っていいのかわからない人へのガイド

すでに表計算機能が搭載されていた。

表計算は,海外ではパソコン用のソフトとして開発されたはずだが,日本ではなんとワープロから認知され始めたのだ。

パソコン用の表計算ソフト,ロータス123(エクセルの前に表計算の世界の天下をとったソフト)の登場もまだ数年先だ。

ワープロを使った在宅ワークがすでに登場

これには,目を見張った。

まさか1987年の雑誌で「在宅勤務」」という言葉に出会うとは。

まとめ

1987年というのはどんな時代であったのか。

それはバブル絶頂期の直前,だれもが日本の右肩上がりの反映と維持継続を疑いもしていなかった頃だ。

「企業戦士」という言葉が当然のように使われ,クリスマスは家族よりも会社のクリスマス会兼忘年会に全社員こぞって参加するのが当たり前だった。しかしその見返りは終身保証してくれた時代。

そういう時代にワープロは産声を上げ,日本ではパソコン普及よりも前に,独自に進化,爆発的に普及していった。

表計算も,ワープロ通信も,ワープロのほうがパソコンよりも先だったのだ。

まだまだドットプリンタとか,数色のカラーリポンを取り替えて使う熱転写プリンターで,やっと人の目に耐えられる文書を作ることができ始めたパソコンを尻目に,急速に印字の解像度をあげ,フォントを数種類搭載し,高速印字を可能にしていた。さらにアウトラインフォントも90年代初頭にはでていたのだ。

パソコンでアウトラインフォントを使えるようになるのは,1990年代中頃のWindowsの登場を待たなければならなかったが,ワープロはその5年前には実現していた。

 

ワープロがあったから,ワープロでさまざまな概念や知識をものにしていたから,Windowsで初めてパソコンを触るという人でも,スムーズに移行できた人がおおかったのではないか。

そういう気がする。

日本におけるワープロの独自の進化は,工業的にという意味だけでなく,文化的にもすぐれた意味をもつものだったと思う。

私の著書

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