廊下で大宴会する下宿〜定年間際のおじさんが話しておきたい昭和の話

2019年12月4日

始まりました。

新企画、「定年間際のおじさんが話しておきたい昭和の話

間借りタイプとアパートタイプ

第一回目の今日は、「下宿」

元スパイダースの故かまやつひろしさんが1975年にリリースした「我がよき友よ」という歌があります。

昭和の中頃までの若者の風俗を描いた若者応援歌のような曲です。

この中に次のような一冊があります。

語り明かせば

下宿屋の

おばちゃん 酒持って

やってくる

我がよき友よ かまやつひろし

下宿とは、部屋を間借りして住まわせてもらうことです。もしくはその用途のために建てられた建物です。

普通の家の空いている部屋を間借りして、食事付きで住まわせてもらうこともあれば、家の横などに間借り用の部屋をたくさん作ったアパートのような建物を作り、みんなでそこに住んでいるというようなこともあります。

間借りタイプは、朝ドラのスカーレットで少し前に主人公が住んでいた「荒木荘」のようなものです。

普通の家の いくつかの 空いている部屋に、学生、新聞記者、役所を辞めた男などが暮らして、みんなで集まってご飯食べてました。

家の中の一つの部屋ですから、みんな同じ屋根の下に住んでる兄弟のようなものでした。

入り口は、フスマか、引き戸でしたね。

アパートタイプで有名なのは、「トキワ荘」ですね。

若き日の石森章太郎、赤塚不二夫、藤子不二雄などの漫画家が、手塚治虫の住んでいたトキワ荘というアパートに集まり、漫画を描いていました。

どちらのタイプも、住んでる人がみんな兄弟みたいに暮らしている、ということです。

当時の下宿と今のマンションの違い

部屋が家の中にあるか外にあるか

下宿とマンションとの違いはなんでしょうか?

これまでにお話ししたことである程度イメージはできたとおもおもいますが、最大の違いは「部屋が家の中にあるか外にあるか」ではないかと思うんですよね。

下宿の場合、部屋は一つの建物のまさに「部屋」です。

アパート形式になってはいても、玄関で一度靴を脱いでから「家」に入り,廊下を歩き、その両横に作られた部屋に入ります。

郵便物も、その部屋のある家の住所に届きます。

部屋が家として独立しているわけではないのです。

それに対して、マンションは、部屋の一つ一つが家

住所も異なります。

独立してるんですね。

そこが最大の違いだと思います。

風呂と冷蔵庫、電話は共用

一つの家の中にある「部屋」が住まいですから、冷蔵庫も風呂もトイレも電話も共用でいいのです。

ですから、風呂を沸かす風呂当番もありましたし、便所掃除当番もありました。

一つの家の中にみんなで住んでいるようなものですからこれでいいのです。

どこかの部屋でみんなで酒盛り

一つの家に住んでいる兄弟みたいなものですから、よくどこかの部屋に集まって酒盛りをしました。

家庭教師先などから時々良い酒をもらうことがありますが、そんな時は、下宿に帰ってきて、階段を上がりながら「いい酒もらってきたぞー」と叫びます。

そうしたらそれぞれの部屋から「おー」「おーっ!」と叫び声が上がり、みんなで何か一品持ち寄って酒の主の部屋に集まります。

私の部屋には何故か実家からよく「のり」が送られてきていたので、のりをあぶって持って行きました。

あと、卵とキャベツがあれば、簡易お好み焼きみたいなものができますので、それをさっさと焼いてからさらに乗せて、みんなでつつきながら、酒を飲みました。

二十歳前半というのは、結構人恋しいものです。

一人で論文やレポートなど書いていると、寂寥感に襲われます。

一人ひとり彼女ができて、部屋に入りづらい時、「俺はたった一人で何やってるんだろう?」というような寂しさを味わっていました。

でも、「酒もらってきたぞー」の声に救われるんですよね。

そしてみんなで語り明かしてました。

一人になることはなかったんです。

カレーを作ると必ず食べにくる後輩

一つ家の中の下宿では、どこのへやで何をつくっているのかすぐにわかります。

カレーでも作っていようものなら、下宿中に匂いが伝わります。

私もよくカレーを作りました。

しかし、作ったカレーを全部自分で食べられたことはありませんでした。

「これで3日は食べられるな」と安心していると、ほぼ必ずと言っていいほど、後輩や友達が来るのです。

「おや?何作ってるんですか?」などと、わかっているくせに聞くんです。

「カレーたい?」

「へえー〜」

「・・・・」

「・・・・」

「食べてくか・・・?」

「えっ?いいんですか?」

それを狙ってきているくせに、そしてこっちは必ず食べられるのに、ひととおりこのやりとりが儀式のように行われるのです。

そこに、同じ部活の仲間がベストなタイミングでやってきます。

相伴に預かってカレーを食べている後輩を見て、

「あら?どうした?カレー食べてるの?」

なんて、これまたわざとらしく聞くのです。

「・・・・・たべてくか・・・?」

「おー?いいのか?」

これもまた、定まったやりとりですが。

こうして、3日分と思って作ったカレーを、私は3日目までたべたことはありません。

それぞれの部屋に役割

それぞれの部屋には、役割めいたものがうっすらとありました。

私の部屋は、さしずめカレーを食べる部屋だったんでしょう。

私の部屋はそれ以外に、新聞を読む部屋、お店を飲む部屋として認識されていたような気がします。

下宿の中で新聞をとっていたのは私だけだったので、2階の住人は、下宿に帰ってきて階段を上がると、その正面にある僕の部屋をまず訪れます。

そして、あぐらをかくと、コタツの上に置いてある新聞を手に取ってしばし読み耽ります。

私はその餡、お湯を沸かしてお茶を入れてやります。

新聞とお茶で満足した住人は,自分の部屋に帰っていくのです。

隣は先輩の部屋でしたが、その部屋とその隣のふた部屋は酒飲み部屋でした。

大体その二人が酒を得てくるのです。

一番奥の部屋は、オーディオ部屋でした。

すごくオーディオに凝っている後輩が入っていて、バイトで得た金は全部レコードの「針」などに違うのです。

「先輩!すごい針が入りましたよ。聴き比べてみますか?」と言ってくるので部屋を訪ねます。

壁一面にすごいオーディオセットが組んであります。

30万くらいするマランツのアンプとかそんなのが積み上げてあるんです。

そこで、リー・リトナーなんかをかけるのですが、一旦聞いたあと、「じゃ、針を変えますよ。」と言って、プレイヤーのトーンアームの先の針を付け替えて同じ曲を聴くと・・・

びっくりするほど音が変わるのでした。

生涯の中でおそらく出会うことがないだろうと思うような、オーディオセットで曲を聴かせてくれる部屋でした。

下宿だからこそ、そんな役割がいつの間にかできていたんです。

プライベートは少しあればいい

プライベートなどという言葉はない

こういう、兄弟みたいな暮らし方をしているので、プライベートなどはあまりないかと思われそうですが、そうでもありません。

プライベートなどという言葉はなかったんですが、お互い分かっているので、入られたくないところまでズカズカと入ってくることはありませんでした。

そういた意味では、本当のプライベートはちゃんと守られていたと思います。

そうは言っても、今から見ればプライベートなどないだろうと言われるようなこともたくさんありました。

帰宅したら、友人がお客を接待していた

一番特筆すべきは、部屋の鍵があってないようなものということです。

ドアには鍵がついてましたが、この鍵、開くのです。

ドアノブを固く握って、親指で鍵穴の中心を抑えて、ぐいっとひねると、カシャンという音がして鍵が開けられるのです。

みんなそれを知ってるけど、やらないだけなんです。

でも、時々入られました。

一度は、下宿に帰ってくると「おーい!酒飲みよるけん(酒飲んでるから)来やい!(来いよ)」と言われたので、行ってみると、なんと私が部屋に置いていた酒を飲んでいるのです。

私の部屋に忍び込んで持ってきたのでした。

そして圧巻は,私が返ってくると部屋が空いていてともだちが入っているのです。

何があったのかと思ってみていると,その友達がお茶を沸かして,新聞勧誘員だかの人をお茶を入れて接待していたんです。

ちゃんと鍵をかけてたんですけどね。

鍵など会ってなきが如しの下宿の部屋でした。

インフルエンザで昏倒しているところを発見してもらった話

だからこそ,助かった面もあります。

まだインフルエンザと風邪の区別すらついていない80年代初頭。

私は朝大学へ行こうとして立ち上がった途端,くらっとしたそのままばたんと倒れ込みました。

すごい熱が出ているのはわかりました。

でも動けません。

水が飲みたくても体が動かないんです。

そのまま午前中が過ぎました。

このまま死ぬのかと思いました。

 

ところが,昼になって,私が絶対に出席しないと行けない講義を受けに来ていないことを怪しんだ友達が,様子を見に来てくれたんです。

どんどんととを叩き「おおい!いるかあ!」と叫んでいます。

しかし返事をしようにも声も出ません。

「おーい!!!」どんどんどん!

ドアの外にはスリッパが並べておいてあるので,私が中にいるのはわかってるんです。

 

すると,次の瞬間,当然のようにがちゃがちゃとドアを操作して鍵を開け,二人の友だちが中に入ってきました。

倒れたまま動けなくなっている私を発見し,水を飲ませ,おかゆをつくってくれました。

 

あのとき,ふたりが鍵を開けてというか,ドアノブをハックして中に入ってきてくれなければ,あのまま旅立っていたかもしれません。

おばちゃんが酒持ってやってくる、年に一度の大宴会

廊下で忘年会準備

はい。

ここで,冒頭のかまやつひろしの歌にもどります。

おばちゃんが酒持ってやってくる宴会を,私達は毎年繰り広げていました。

年末の大宴会です。

その日は,下宿の全員が集まって,まず大掃除をします。各部屋は自分たちでということで,共用のろうか,階段,風呂,トイレ,玄関などをみんなできれいにするのです。

午後からは,みんなでボーリングに言って遊びます。

そして,いろいろ買い込んできて,夕方からみんなで大宴会をするのです。

それも,廊下に各部屋のこたつを出してならべ,そこに料理を盛ってするのです。

ろうかで宴会なんて,あまり聞いたことないんじゃないでしょうか?

これが楽しくて楽しくて・・・。

ひとりだけ彼女がいなかった僕でも(と,何人もが思っていたらしい),みんなでいっしょに飲みさわぐ。

彼女がいない寂しさなど,吹き飛ぶ瞬間でした。

おばちゃん呼んでこようぜ!

宴会が盛り上がると,リーダーの先輩が,「よ~し!おばちゃん,呼んでくるぞ!」と叫びます。

すぐに何人もがアパートの隣りにある母屋に走ります。

おばちゃんもわかっていて,一升瓶もって階段をあがってくるんです。

「語り明かせば 下宿屋の おばちゃん 酒持ってやってくる」

まさに,歌の歌詞がそのまま現実になっていました。

我が良き友よ

はい。

第一回目は,下宿の話でした。

プライベートについての考え方,感じ方が,現代とはちがうかもしれませんね。

今よりも,感じられるプライベートはずいぶん小さかったかもしれません。

しかし,その時代に生きた我々は,プライベートがない,少ないなんて感じた古語はなかったと思います。

鍵があるのかないのかわからない様な部屋の中で,一人勉強し,一人料理をし,一人悩み,一人涙したような時間も確実にあったんです。

でもね。

酔っ払って帰ってきた柔道部のともだちが,寝ている僕のへやの鍵を開けてずかずか入ってきて,酔に任せて柔道の技をかけてくるのはいやでしたね。

質問してね

このシリーズ,少し続けていこうと思っています。

よろしければ,昭和の頃のことについて興味があれば,質問してくださいね。

リアルタイムで生きた昭和の話をさせていただきます。

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