023 書評

「目に見える世界は幻想か?~物理学の思考法」Lyustyleの書評

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2017年の6月ごろ読んだ「目に見える世界は幻想か?」を改めて手に取ってみました。  

私は,数学も物理も,数式レベルでは全くわかりません。

しかし,その意味するところや,解明しようとする人の営みにはとても興味があり,物語としてそれらの著作を好んで読みます。

フェルマーの最終定理」などは,ここ10年ほどの間に何度読み返したかわからない「至高の一冊」となっています。

数学の本というよりは,人間のドラマ,謎解きのドラマです。

 

さて,本書は「数式・図表を用いない物理学の入門書」という触れ込みで,新聞の書評欄に紹介があり,それが気に入ってすぐにAmazonで注文したものです。

 

 著者の松原隆彦氏は,ニュートン以来の目に見える物理学におけるさまざまな法則を自明の常識として受け入れいてきた人々が,アインシュタインの時間と空間の理論によってそれらを捨て去らなければならなくなった歴史を,物語として丁寧に示してくれます。

🍏たとえば,寺田虎彦の話が出てきます。

夏目漱石の「吾輩は猫である」に出てくる寒月君が,漱石の弟子であり,科学者であり文学者である寺田虎彦をモデルにしているということはよく知られています。

寺田虎彦の生きた100年前,すでに時代はアインシュタインをはじめとして,目に見えない世界の,これまでの常識ではとても考えられない現象を相手にする物理学へと足を踏み入れていました。

時代は,これまでの人間を根底から縛り付けていた「常識」を捨て去らなければらなくなっていたのです。

寺田虎彦は,目に見える世界の現象を物理学で解明しようとした,最後の世代の人であるかもしれません。

これはもう,ドラマです。

 

🍏ニュートンによる近代物理学から,アインシュタインの光量子仮説への流れ,それからおなじみシュレーディンガーの猫,重力波,そして物理学の未来。

 まったく数式は出てきません。

 なのに,よくわかるのです。

 いや,わかったような気になるのです。

 私にとってはそれで充分です。

なぜなら,私は,「ああ,量子論の世界はとってもおもしろいなあ」と思いながら知の世界に遊ぶことができるからです。

  

 量子力学にコペンハーゲン解釈というものがあります。

 コペンハーゲン解釈と聞いただけで,普通は「はい。私とは関係のない世界の話ですね。それでは私はこれで・・・」となってしまいそうです。

 しかし,この言葉で「何々?」と戻って来てしまいたくなりそうです。

「人間が観測するという行為を離れて,世界が客観的に存在しているわけではない」

 要は「我々が観測するから世界はある。観測しない我々がいなければ,世界が客観的にあるわけではない」とそういうわけです。

 聞いただけではちょっとわかりづらいですが,去っていこうとする私の足を止める興味深い言葉であることは直感的にわかります。

それは,感覚の世界では私たちはよくそのようなことを考えているからです。

 🍏「私が死んだら,世界も終わるんじゃないか?」と。

 一度は考えてみたことがあるんじゃないでしょうか?

 🍏実際に,今私が見ている世界は,本当にそこにあるのだろうか?

 私が,「ある」と解釈しているだけでは?

 

 「人間が観測するという行為を離れて,世界が客観的に存在しているわけではない」とい言葉は,私たちが時々ふと感じる上のようなことを,公式に述べたものなんですね。

 自分一人の中だけの,独りよがりの戯言だと思っていたことが公式に述べられると,これはもうどうしてよいのかわからなくなります。

 「そんなこといわれたって,それは私が脳内の遊びとして感じていたことなのに,私はいったいどうしたらいいの?」という一種の不安がよぎります。

しかし,どうもその不安という感覚は,知的なスリルなのではないかと言う気になります。

「え~そんな馬鹿な~」と言いながらワクワクしている自分がいるのです。

  

 近年,「この世界は,コンピュータープログラムの中に作られた仮想現実である可能性が高い」といわれ始めています。

イーロン・マスクが「世界は仮想現実でない可能性の方が低い」という考えの持ち主であることも,大勢の人が知るところです。

  

 そのあたりのことがこの本に書いてあるわけではありません。

しかし,この本の量子論の世界の話を読んでいると,仮想現実に我々が生きているのではないかというイーロン・マスクの考えもわかる気持ちになります。

 

 ここでは,話の流れで量子論のことを取り出して書きましたが,重力波の話や,物理学の未来の話も,「物語」として楽しんで読みました。

 脳みそを撹拌し,ブラッシュ・アップさせてくれる本です。

 何度読み返してもおもしろい,私にとっての「至高の一冊」になる本でしょう。

 

 「至高の一冊」については,下記の記事をお読みください。

「10冊どころか20冊の本を並行して読むわけ」

「アイドル時間をつくらない! 「20冊並行読書」のやりかた」

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