「遅読のすすめ」の第2部を読んでいるとき,この言葉に出会った。

「私から年齢を奪わないでください。働いて,ようやく手に入れたのですから」

メイ・サートンという作家の言葉。

文中では章の最後に一行,さらりと紹介してある。

メイ・サートンという人を私は知らない。なんときめ細かな感性を持った人であることか。

 

加齢はマイナスイメージばかりではない。

加齢によって得られるものは失うものよりも豊かであると,この年になってつくづく実感する。

ものの見方,考え方の深まりは,若いころには思いもしなかったような経験をさせてくれる。

「若いころに帰ってもう一度やりなおしたい」というようなことはあまり思わない。これまでも思わないできた。

ときどき,あれが人生の分岐点だったのかなという時に戻ってみて違う道を歩んでみたらどうなっていただろうか?と思うことはある。

しかし,その時に戻ってみたいとは思わない。その時その時を真摯に生きてきたからだ。自分の来し方にさほど後悔はない。

 

メイ・サートンは,「私から年齢を奪わないで」といった。

せっかく手に入れた私の年齢。働いてい働いて。その積み重ねが私の年齢。

私は,これまでの人生に後悔はないといった。しかし,「働いてやっと手に入れたこの年齢」という思い方はしたことがなかった。

ためしにそのように思ってみる。

「私から年齢を奪わないでください。働いて,ようやく手に入れたのですから」

そのように思ってみる。

しばしこの時間を味わった。

豊かな時間が流れた。

だから,私は,ページをめくりたくなかった。

今日の読書はこれで終わろう。