メルマガ「週刊知的迷走通信」のメインコンテンツ,「Lyustyleの読書」で配信したものをリライトしたものです。
「知的迷走通信」としては倉下忠憲さんの新刊,「Scrapbox情報整理術」を出さずにはおられません。
これは当然の流れでしょう。
多くの人が発売を待ち望んでいた本です。私のまわりのTwitterやブログお友達も,ワクワクしている様子がTwitterで伝わってています。
なんといっても,昨年2017年春ごろ,いっきにブレイクして多くの方が使い始めたScrapboxです。
言葉自体をリンクボタンに変えてしまい,すべての情報をフラットに,縦横自在にむすびつけてしまう,WIKIライクな魅力的なツールです。
でも,実際,どのように使えば自分の情報整理,そして知的生産に使えるのかというのはみんなで共有プロジェクトを作ったりして手探りで探求している状況でした。
今回ご紹介する倉下忠憲氏の「Scrapbox情報整理術」は, 私達のそんな探求に,一度に答えを出してくれました。
現状におけるScrapboxの魅力が余すところなく著されているのです。
実は、この本の書評については、すでにTak.さんの素晴らしい記事があります。
「Scrapboxと幸福に出会うための最適なガイド」
私にはとてもこれを超えるどころか肩を並べるレベルの記事さえも書く自信はありません。
だから、ここでは、書評というよりは,私がこの本を読んで、どのような感想を持ったのか、ということを述べるにとどめたいと思います。
それでも,多少長くなりますが,どうかお付き合い下さい。
目次
共感の渦!
まず、本を通読して 私は「そうだ!その通り!」という共感の興奮に包まれました。
Scrapboxにおける情報は階層を持たない
一つ目は,「Scrapboxにおける情報は階層を持たない」ことについてです。
Scrapboxでは,情報は全てフラットに並べられています。
だからこそ、ネットワークの組み換えがしやすく、知の体系が更新されやすいのです。
階層構造だったら,この組み合わせの組み換えがうまくできません。
このことは,Scrapboxの情報管理の根幹をなすことです。そしてそれは実にわかりやす私達の前に示されます。
実にシンプルです。
シンプルな仕組みで,脳の複雑な知のネットワークを見せてくれているかのようです。
このことに大変共感しました。
「とりあえず」「気楽に」「あとで」
次に、Scrapboxは、「とりあえず」「気楽に」入力しておいて、「あとで」いかようにでもリンクを張って情報のネットワークを作ることができることです。
とりあえず書き出した文章中の言葉をブラケット( [ ] )でくくることで,リンクボタンにすることができるのです。
実に魅力的です。
これを倉下氏は「記述し、リンクを貼り、リンク先を記述し、リンクを貼り、リンク先を記述する。こういう進め方がリンクベース・記述ペースの進め方です。」と言います。
私の経験から言って、これはとても強力です。
私は以前からある物語の構想を持っていて、それをScrapboxでやればどうなるかと思って書き出してみたことがあります。
新しいページを作って、主人公の名前と職業を書き込んだ途端、話が広がり始めました。
主人公の職業はペインターなのですが、それをリンクボタンにするために、ブラケットでくくる。それでリンクボタンになる。
それをクリックすると、「ペインター」という名前の新たなページができる。
そこにその世界でのペインターの役割を書いてみると、さらにその中の「探索ギルド」という言葉が説明を求めていることに気づく。
「探索ギルド」をブラケットで囲む。
そして生成されたページを開いて説明を書く・・・・。
その経験を私は次のように書きました。
「リミッターがさらにはずれた状態になりました。
発想のウェブが横に勝手にどんどん広がり始めたのです。
頭の中から泉の水のようにどんどんアイデアが溢れ出てきます。
それを新しいページで書くと、関連してページが現れ、謎を解く鍵としてそのページの内容が使えるということに気づく。
すばらしい1時間でした。」
・・・
後付けでどんどんその世界の事象が頭に沸き起こり、またアイデアになって広がっていきました。
そんな経験があります。
この記述ベースの書き方は、発想を広げて、それらを深堀りすることにおいて、絶大な力を持つのです。
以上,Scrapboxにおける「あるある」からの二つの共感について述べました。
目からうろこ!
また,目からウロコが落ちる経験もしました。
既存の要素の異なる組み合わせ
一つ目は、「既存の要素の異なる組み合わせ」ということについてです。
アナロジーとメタファーという概念を用いて述べられたScrapboxの魅力に、私は新たな知見を得ることができました。
一般のデータベースでは、ある情報にキーワードやタグをつけて、あとから抽出するかたちをとります。
Evernoteにおけるタグもそのようにしますね。
そこでは、たとえば,「モチ」という情報に「大根おろし」という検索ワードやタグをつけることはありません。
しかし、記述ベースで入力を進めるScrapboxだとこうなります。
まず,Scrapboxに(「とりあえず」「気楽に」)「モチは大根おろしのように白い」と記述するでしょう。
これは「モチ」というもののひとつの属性を表す説明です。
Evernoteでは,のちのちこの情報を引いてくるために「モチ」というタグ以外つけることはないでしょう。
「大根おろし」などというタグはつけません。
この情報では決して,大根おろしの説明をしているのではないからです。
ところがScrapboxでは、この「大根おろし」という言葉まであっさりとブラケットで囲んでボタンにできてしまうのです。
そして、後日どこかで「大根おろし」に言及して、それをブラケットで囲んでリンクボタンにした瞬間、いつぞやの「モチ」の説明ページがリンクされて表示され、びっくりするわけです。
このびっくりが新たな発想を呼ぶことがあるのです。
普通のデータベースでは、このようなびっくりは起こりえません。
このようなネットワークの唐突な出現は、記述ペースで進めることが可能なScrapboxだから可能になります。
新たなネットワークの組み換えがいとも簡単に行われてしまうのです。
1年間使ってきて,このことには考え至りませんでした。
潜在的にある暗黙知を顕在化させることができる
目からウロコの二つ目。
「とりあえず書いておけること」のよさとして、倉下氏は、潜在的にある暗黙知を顕在化させることができること、と言われています。
書くということで頭にあるもとりあえず出してみることにより、「わかる」という領域に顕在化させることができると。
あとでいかようにもリンクを張れるという安心感から、とりあえず頭にあるものを出すということが実に容易であることがScrapboxのよさです。
確かにそうだなと思いました。
これはフリーライティングに通じるものです。
とにかペンの先からノンストップで考えをほとばしらせることで,いつのまにか潜在的なレベルに在ったものが顕在化する。
そして,自分自信が紡ぎだしてきた言葉に自分自身で驚いたり感心したりする。
このような書き方を,Scrapboxではしやすいのです。
以上,私が持った感想,「あるある」と「目からウロコ」についてそれぞれ二つの視点から書きました。
私の頭の中にあった、ぼやっとしたScrapboxの良さが、はっきりと表された気がします。
つまり、私は人にScrapboxの良さを,私の「知」として語ることができるようになったということです。
読後に訪れた私の変化
さて,この本を読んだ後、私の中にいくつかの変化が訪れました。
Scrapboxでの情報収集ブースト!
ひとつは,1年間「惰性で」続けてきた Scrapboxによる情報収集に、拍車がかかったということです。
この1年間に600ほどしか作れなかったページが、今、すごい勢いで増殖し始めているのです。
つまり,なんらかの「知」の断片を,Scrapboxに記述することが,ここへきて一気に増えているのです。
長いこと,MemoFlowyからWorkflowyに入力していたアイデアは,今,91958(クイックSB)や,Porterを通してScrapboxに書くようになりました。
そこで構築された知見を,今度はWorkflowyに移してアウトラインプロセッシングを行いながら文にするのです。
今回のLyustyleの読書は,まさにそのようにして書かれました。
Scrapbox版の公開プロジェクト「知的生活日記」を再開
二つ目は,昨年、30個ほど書いてやめてしまっていたScrapbox版の公開プロジェクト「知的生活日記」を再開したことです。
やめずに続けておけば今頃は随分面白いことになったのに、と思いながら、現在毎日、増殖中です。
二つのプロジェクト増殖!
三つめは,新たに二つのプロジェクトを作ったことです。
イラストポートフォリオと、書評用プロジェクトです。
Lyustyleのイラスト・ポートフォリオは公開です。
https://scrapbox.io/ilstlyustyle
イラストポートフォリオは、リンクタグにより、同じタグを持つイラストがずらっと下に表示されます。
ためしに,どれかのイラストをクリックしてみてください。
それに関連するリンクを持つイラストたちが,瞬時に組み変わります。
Scrapboxは、このようなギャラリー的な見せ方に適しているのだな,と改めて思います。
非公開の書評用プロジェクトは、これまで全ての学びを詰め込んできた私の非公開プロジェクトから、読書からの学びに関するものだけを独立させたものです。
全ての情報のネットワークが思いもかけない発想をうむことを期待して勉強も研修もそして書物からもなんでも入力していましたが,やはり距離が離れ過ぎているとノイズが多くなるのです。
そこで、書評だけは独立させることにしたのでした、
Scrapboxの使用開始から一年経って、新たなステージに入ったことを意識しています、
それには、この「Scrapbox情報整理術」が大いに背中を押してくれたのだ、と思っています。
はい。
今回は,ボリュームが多くなりましたので,これで終わりです。
「知的生活日記」の方で,今週の私のさまざまな活動についてみることができます。
お読み下さってありがとうございます。
今日はここまでです。
それでは,次回をお楽しみに!
◇ ◇ ◇
以上は,メルマガ「知的迷走通信」に連載している「Lyustyleの読書」からの転載です。
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