メルマガ「知的迷走通信」に連載していた書評から,転載しています。
今回は,「斎藤孝の知の整理力」です。
斎藤孝氏の著書とのおつきあいは、今から10年ほど前の「3色ボールペン情報活用術」に始まりました。
以後,「座右のゲーテ」「声に出して読みたいシリーズ」「語彙力こそが教養である」など、その博覧強記ぶりと次々に生産される知的生産物におどろきながらの出会いを続けてきました。。
その斎藤氏自身の中に「知」が整理されているから、これほど多くの著作を世に出せるのでしょう。
この本は、いかに私たち一般の人間が知的で生産的なアウトプットにつなげるために知を整理したらよいのかということについて平易にまとめられています。
「知」
「知識」
「知的」
「知性」
「知」に関する言葉はいろいろありますが、斎藤氏は次のように考えています。
知識をたくさんもっていても、それが繋がりがなくバラバラだったらただの雑学王。
もっている知識をきちんと整理してつながりを持たせ,知的で生産的なアプトプットにつなげられることができれば知性的な人であると言える。
そのように整理されています。
つながりを持たせたアウトプットの力。すなわち、「言葉こそが知性」と言い切ります。この点、「語彙力こそが教養である」とつながります。
それは「知の整理」によって促されます。
これが,タイトルのゆえんです。
ここでいう整理とは、単に「あっちのものとこっちのものとを同じグループにして、あそこにまとめ・・・」ということにとどまりません。
持っている「知識」をスムーズに相手に伝えるアウトプットのための力です。
それでは、どのような整理の仕方をしていけばいいのか?
この本には、それらの方法が明快に述べられています。
第1章では,アウトプットについて述べられます。
言葉は「ネタ」であり、新しく得た知識を人と共有するということは昔から行われてきたわけで、驚いたこと、すごいなと思ったことがあったらすぐに場に提供すること。
「これは使えそうだ」と思うものがあれば、すぐさまそれを引用して誰かに話すということを勧められています。
「伝われなければ情報に価値はない」とにかく,日常会話の中で使ってみることです。
ストックするだけではダメ。
Evernoteにデータを取り込みっぱなしにしている私にとって大いに反省させられました。
第2章では,知の整理に分け入ります。
知の整理には二つの類型があり、まずは「面白い!」と感じた知識の整理のしかた「カオス型整理」について語られます。
知の整理は、目に見えるもの、たとえば書類などを整理する外的整理と頭の中の活動である内的整理に分けられます。
外的整理はそれを目的化するくらいならやらなくてもいいと明言されます。
大事なのは「頭の中をいかに整理するか」すなわち内的整理です。いかに取り出しやすいようにストックするのかということです。
斎藤氏は「取っ手をつける」と表現されていますが、Evernoteでいうところの「タグ」と考えていいでしょう。ものを覚えるときには、あとから利用する状況を考えたタグをつけておくと、その状況になったときに取り出しやすくなるわけです。
これはただ本を読んだり、テレビを見ていたりなどしていてもできないことですね。こちらから取りに行くつもりでストックしていくようにインプットしないとなかなかできません。斎藤氏は、これを「狩りに行く」つもりで知識を取り込むと表現しています。
第3章では,知の整理の二つの累計のふたつめ「秩序型整理」について語られます。
体系だった知識の習得には秩序型整理が必要です。
秩序型の知識の獲得の方法として「もくじ勉強法」があげられていますが、これはなかなか実効性がありかつおもしろい方法です。
もくじを拡大コピーし、内容をもくじに書き込んでいくのです。私はマインドマップによる読書でこれをしていました。
このことで、もくじは重要なキーワードがはいったレジュメになるわけです。
これは,斎藤氏自身が大学時代に使っていた勉強法であり、すべての科目を効率よく学ぶことができたそうなので、何かを体系的に学ぶ必要がある場合は、この勉強法はとても有効だと思います。
私自身もマインドマップをつかった目次にブランチを加えていくやりかたで読んでいて、その効果は太鼓判を押します。
マインドマップの場合は、イメージとして頭に焼き付きますし。
秩序型整理に関して特におすすめされているのがレジュメ作成。
「知識をレジュメ化」するときに頭が働き、知識が頭に定着します。
つくりかたは簡単で大項目1,2,3をつくり、それぞれの中に小さな1,2,3やABCをわけていく。
3つの項目に分けるということが大きなポイントをつかもうとする意識を働かせます。
このことによる知識の整理は、アウトプットにそのままつながります。
ということで、このあと読書術の話になるのですが、大きく3つの項目に分けることにならい、ここまでとします。
「完璧なまとめになってないじゃない」といわれそうですが、まとめは完璧さを求めないこと、すなわち「ピカソ方式」がいいのだそうです。
7~8割が届けばいいというつもりで残りの2~3割は口で説明し、ほかのことに力を振り向ければいい、と考えるくらいで。
私のメルマガで配信している書評を記事にしてまとめています
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