絵を描く

油絵を描きながら,「師について学び,いつしかそこから離れる」ということを考える

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近頃また油絵の道具を出してきてキャンバスに絵の具を塗りたくっているのだが、昔からどうにも絵の具の乗せ方がうまくいかない。

パレット上で絵の具と油を混ぜても,なんだかそれがうまくキャンバス上にのってくれないのだ。べとっとかたまりのようになってしまっていたり,下に着けた色と妙にまざってしまったり,筆を動かしているうちにせっかく乗せた絵の具がまわりとまざってしまってその色味がなくなってしまったり。

ところが,先日油絵の初歩というような本をめくっていたら,はたと膝を打つようなことがあった。

私はパレット上で絵の具を筆に着けるとき,それを油で溶かなければならないと思っていたのだが,作例を見ると「最後まで油を混ぜない」とか「ペインティングオイルは万能油だから,流動性を出したいなら最初から仕上げまで使ってもよい」というようなことが書いてあったのだ。

使わないといけないどころか「使わない」「使ってもよい」ということだった。

「油絵の具はそのままつかってもまったく問題ないようにつくられています」とも書いてある。

・・・

なーんだ。そっか。

油絵を描き始めて30数年になるのだが、30年間うまくいかなかった悩みが,なんだか今頃一瞬にして消え去った。

跳んで帰って試してみると,実に快適。思ったとおりに色がキャンバスにのるではないか。なんでこんなこと今まで知らなかったのか。一気に油絵熱が沸き上がってしまい,ここ数日,絵ばかり描いている。

油絵を描こうと思い立って30年。きちんと師について学んだわけではないので未だにこんなことで迷っている。

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師につく,ということは大切なことだなと痛感。きちんと基礎基本を学んで,そこから「私流」を見つけていくべきだったのだ。師にさえついていれば,こんなこと翌日にはおしえてもらえるようなことだったのかもしれない。私は30年かかった。

・・

師について学ぶといえば、中世ヨーロッパの画家たちの工房はまさに師について学ぶものだった。

ダビンチ工房とかラファエロ工房など,まさに注文品を大量に生産していく「工房」であり,職人たちは,そこで肌の色の作り方とか,服のひだの表し方などを学んでいたのだった。

そして一通りの技術を身に着けて独り立ちしていく。師の技を継承しながら,「私流」を編み出し,新しい時代の絵画や彫刻ができていく。

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久留米の石橋美術館で開催されている「風景画の誕生」を見てきた。宗教画の時代だから、注文に応じた製品としての絵がところせましとならんでいた。

2016-06-04 10.12.29

一つ一つの絵を見ながら,私は絵そのものよりも,この画家が下書きからだんだん絵の具を乗せて完成に持って行った軌跡が見えるような気がしてそこに興味を持った。師から教えられた形のとり方,描き方、絵の具の溶き方、色の乗せ方などを忠実になぞりながら、まさに製品をきちんと作っていくように絵を描いていく。

注文主の意図に沿った製品の制作であり,現代の画家が自己表現として描く絵と趣は違うのだが,工程通りに描かれた絵の中にも,その職人の「このように描きたい!こんなことを表したい!」という表現の意欲というようなものが感じられた。

そういうことの何百年という世代間にわたる繰り返しが,いつの間にか厳格に定められていたであろう工程から少しずつ少しずつ離れ,独自性を生み出し,さまざまな表現技法や表現意図(宗教画を描く→背景の風景の方が私たちの時代に合ってる→光を表そう→いやむしろ見えない内面を表そう)などへと結びついてきたのだな,とそんなことをつらつら考えた。

2016-06-05 11.06.46

いつの時代の職人たちも,歴史の輪切りとして相対化された中で過去と現在をつなぐ役として生きていたのではなく,今この時,一番新しい今を精一杯生きて絵を描いていたのだろうな。それが後年○○主義とか○○派なんて価値づけされるようになるのも知らずにね。

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今更だけど,師についてちゃんとならおうかな,という気もする。







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