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【お話】Evernote先生 江波野徹の一日〜第2話 学校へ到着するまで

更新日:

徹は家をでた。

車のボンネットの上に猫がまるくなってねている。
そっと近づくとFastever Snapを起動し、猫写真を撮った。
パシャッという音に目を覚ました猫は、眠そうに「にゃあ」というと、「やれやれ」といいそうな顔をしてボンネットから降り、自分の家に帰っていった。

FasteverSnapというのは、Fasteverがテキストを保存するEvernote専用アプリなのであるのに対して、写真保存専用のアプリだ。起動して写真を撮るだけだ。これでこの猫は私のEvernoteに保存される。

「また、来てたの?」
「うん。あたたかいんだろうね」
「猫がきたら、いつも写真撮ってるわね」
「そう。ちょっとした用途があるんだよ」
「ふーん。猫写真家にでもなるのかな」

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毎朝車で通勤している。およそ40分の運転時間だ。

徹は同じ時間に家を出て、同じ道を通って出勤する。イチロー選手のように、毎日同じ時間に同じ場所で同じことをすることを繰り返すことで、学校につく頃には集中モードに入っている。この間、運転しながらいろいろなことを考えるのが彼の日課だ。

考える内容も決まっている。学校についてからの一日のシミュレートだ。

職員室についてからの動きは。教室にはいつもの時間に入るが、途中で靴箱をチェックしておかなければ。最初に入ってくるだろうあの子にいつもの笑顔で朝の挨拶をしてからは次々に登校してくる子どもたちに声をかけていく。朝の会が始まり、健康観察を行う・・・・

ふいに気がかりな子供のことが頭に浮かんだ。「昨日顔色が優れなかったスズキ君、そういえばお母さんが病気だといってたな。何か関係があったのかもしれない。今日はそれとなく確かめてみよう。」

そのままにしていたら忘れてしまいそうだ。

徹は信号待ちのときにスマホを取り出して電源を入れた。そこにはすぐに入力できるようPosteverが起動された状態でまっている。すかさずマイクのアイコンをおしたらsiriの音声入力画面になった。

Posteverというのは、FasteverとおなじようにEvernote送信用のアプリだが、これは写真も送ることができる。さらに、同じタイトルのメモを送れば、Evernote上ではどんどん書き足していってくれるのだ。本日の日付をタイトルにしておいてメモをし、送信していけば、1日のうちで送ったメモがすべてひとつのノートにまとまり、日誌として使うことができる。

Siriというのは、iPhoneにそなわる音声言語認識の機能のことで、「Siri」と名前が付けられ擬人化されている。Siriに向かって「音楽かけてよ」というとあたかも秘書が望みを叶えてくれるかのように音楽アプリを立ち上げてのぞみの音楽をかけてくれる、CMでやっているあれだ。
徹はこの機能をメモをするのに使っているのだ。

徹は、「スズキ君。お母さん。確認」とスマホのマイクに語りかける。スマホではsiriがすぐさま文字に変換。Posteverに表示してくれる。そのまま電源を切り、次の赤信号でまた思いついたことをその次に入力し足していくのだ。
その都度送信してもEvernote上ではひとつのノートにまとめてくれる。だが、いくら赤信号でとまっているかといっても運転中だ。あまりスマホの操作はしたくない。だからPosteverを起動したまま、Siriのボタンのオンオフのみ行い、どんどん書き足していくようにしている。

学校につくと、Posteverの画面はさまざまな思いつきでいっぱいになっていた。

「プリント 印刷」
「朝の会での最初のツカミ 走ろうとしてこけた」
「スズキ君。お母さん。確認」
「□先生に、資料のありかをきく」
「自己評価の送信 今日中」
「借りていた資料を教頭先生に返却」
「中休み あそび」

Siriにひととおり要件を話した後「改行」というとカーソルを改行してくれるので、要件が一行ずつに分けて示されている。ちなみに「まる」といったら「。」を、「てん」といったら「、」を入力してくれる。

「中休み あそびってなんだったっけ・・・・?」
つい先程の思いつきをもう忘れている。

少し考えて思い出した。
ずいぶん昔のことになるが、徹が3年生を担任していたときのこと。校外の見学から帰ってきた時には、もう中休みの残り時間は3分しか残っていなかった。
「ああ、あと3分しかない・・・」そうつぶやいた時、教室に荷物をおいて階段から降りてきた男の子がこう尋ねた。
「先生!中休みあと何分のこってますか?」
「3分だよぅ。」
男の子はそれを聞いた後、こう叫んだ。わたしは今でも忘れない。

「3分!まだ遊べる!」
男の子はそのまま校庭にかけていったのだった。

あまりにもエネルギッシュな態度が強烈に徹の頭に残っているのだ。
その子どものことを、子どもたちに何かの授業のツカミとして話してやろうと思いついてメモしていたのだった。
「そうだそうだ。クイズにしてやろう。『その時、男の子はなんていったでしょう』ってのがいいかな。きっと子どもたちは驚くか大笑いするかだろうな」
車の中でのおもいつきのネタ。記録しておかなかったら完全に忘れてしまったところだった。

昔は、車のダッシュボードにふせんを貼っていた。何か思いつくとそれに書いてあとからシステム手帳にはっていたものだ。

職員室につきPCを起動。すぐにEvernoteをたちあげてみると、先ほどスマホで入力したノートがすべてPCのEvernoteと同期され、ちゃんとデスクトップのPC内で表示された。

徹は、音声変換の際に誤変換のあった文字をなおし、「中休み 遊び」というメモの内容に「3分 まだ遊べる」という言葉を書き足す。これで、「あの時のことか」と思い出すことができるだろう。

「スズキ君。お母さん。確認」という文字の行には行頭にチェックボックスを付け足した。こうするとあとからチェックボックスのついたものだけを抽出して見ることができるのだ。おわったらボックスをチェックしたら完了となる。

今日はそのほかに
「自己評価の送信 今日中」「借りていた資料を教頭先生に返却」という3つの行にチェックボックスを付け加えた。
これでこの3つは遂行すべきタスクとなり、確実に遂行されるだろう。


第2話です。

第1話はたくさんの方に読んでいただき感謝しています。

猫の件はScrivenerに書いていた時にはなかったものですが、その後第3話をふくらませている時に思い立ち、第2話で伏線としていれました。「ちょっとした用途があるんだよ」という徹の言葉がそれです。

こうしてブログに書いていると、1年前に書き上げた時には予想もしなかったお話がくっついてきて膨らんでいき、おもしろいなあと思います。このお話は、もともと「教師はEvernoteを使いなさい」という題名の本のプロローグ的なお話で、「ははあ、Evernoteってのは、こんなふうに使えるのか。便利かも。使ってみよう」と思ってもらえるようにするためのものでした。だから、お話自体は無味乾燥なものだったのですが、ブログとして公開した途端、江波野徹がなんだかいきいきしてきて主張しはじめたという感じです。

初めての経験です。お話を書いてそれを公開するというのはおもしろいものですね。

そういうわけで、第3話では猫写真の意味が述べられます。最初の稿から2倍くらいにふくれてしまいました。







Lyustyleの本

kindleで読める電子書籍を書いています。2017年6月現在2冊の本を出しています。


 


現在,教育ちゃんねるで連載している記事から,3冊目の本を出版予定です。


 



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